白と黒の神話
 アルディスのお気に入りであり、ハートヴィル侯爵令嬢という身分の彼女である。それがかなわないということがあるはずもなかった。


「リア、あたしもなの?」


 国王との謁見にそなえて正装しているセシリアのそばで、ミスティリーナはそうぼやいている。


「当たり前じゃない。あなたも一緒だわ」


 セシリアの言葉に『わかって欲しい』というような顔で返事をしているミスティリーナ。


「できればやめときたいのよ。だって、あたしは黒魔導師なの。お城の人ってそういうのは嫌いなんでしょう」

「そうは言ってないわよ」

「それに、あたしは礼儀作法も何も知らないの。恥かくのがわかっているじゃない」


 ミスティリーナの言葉にどことなく納得したようなセシリア。たしかに、気ままな生活をしていた彼女ならば、国王に会うことは緊張するものだろう。嫌がっているものを無理に同席させる必要もないだろうとセシリアは思い始めていた。
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