白と黒の神話
 カルロスの言葉に返事をしあぐねていたウィルヘルムは、思わずセシリアの問いかけにとびついていた。それに力を得たようにセシリアは言葉を続けている。


「調べなければならないことがございます。地下の宝物庫への入室の許可を願います」

「地下の宝物庫だと! 本気で言っておるのか」


 思わず語気を荒げているウィルヘルム。しかし、セシリアはそれに臆するところはないようだった。彼女はまっすぐに国王の顔をみている。


「本気で申しております。許可をいただくわけにはまいりませんでしょうか」


 一歩も引く様子をみせずに言葉を続けるセシリア。そんな彼女にウィルヘルムはため息をついていた。


「お前は簡単に言うがな」

「アルディス様の御為です」


 国王の言わんとしていることはセシリアも知っていること。今、自分が言っていることがどれほどの無茶かセシリアはわかっている。それでも、彼女はそれを通さなければいけないと思っていた。
< 149 / 314 >

この作品をシェア

pagetop