白と黒の神話
「カルロス様から目を離さないで。ここから出たとたんに、どこかで喧嘩なんて考えたくもないわ」

「本当です。もっとも、あれは似た者同士でしょうね」

「だから、アルディス様をはさんであれだけの喧嘩ができるんでしょう」


 セシリアの言葉に黙ってうなずいているウィア。もっとも、当の二人は天敵をみるかのようにお互いを睨みつけている。その様子をため息をつきながらみているセシリアは、改めて国王に挨拶するとその場を離れていた。

 セシリアのその動きに合わせるようにウィアも動いている。その彼がカルロスの首根っこをつかまえているのは間違いない。いくらなんでも他国の統治者の前でその身内との喧嘩が情けないものであるということは明白な事実だからである。しかし、アルフリートはその行動が自分から逃げるものであるということを敏感に察していたのだろう。


「待て、逃げるつもりか」

「アルフリート、見苦しい」
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