白と黒の神話
 神竜の言葉にウィアはうなずいている。千年前でも今でも、アンデッドに対する恐怖心は変わっていないだろう。ならば、聖教皇が己の威信をかけておこなう聖戦に人々が参加しないはずがない。個々の能力ではアンデッドにかないかけもしない人間だが、数を集めることで勝利したのだと歴史は伝えている。


「歴史の話を聞きたいんじゃないの。どうして、アルディス様とジェリータがそっくりなの」


 苛ついたようなセシリアの声。そして、カルロスも感情を押し殺したような低い声で詰め寄っている。


「話をそらしているのか? それとも、教えるつもりがなくなったのか?」


 そんな彼の声を耳にしたウィアは顔をひきつらせている。カルロスがこんな口調になった時は暴走するよりも恐ろしい。なぜなら、こんな状態の彼にいつもの殺し文句はきかないのだ。そんなそれぞれの思惑など関係ないように話し続けるシュルツ。
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