白と黒の神話
「このあたりのことを知っておかないと話にならないんだよ」

「そうなの?」


 かなり苛立ってきているセシリア。その声と表情には『早く教えろ』という思いが見え隠れしている。


「そんなに焦らなくてもいいのに。知らない方がよかったと思うことかもしれないんだよ」

「教えるつもりがあるなら、勿体ぶらずに教えろ」

「仕方がないよ。あの二人は似ていて当然なんだから」

「その理由を教えろと言っている!」


 そう叫んだカルロスの瞳には、どこか剣呑な光が浮かんでいなくもない。シュルツを正面から睨みつけたその顔は、彼の返事だけをまっている。


「簡単だよ。二人は同一人物なのだから」

「そんなはずないわ!」
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