白と黒の神話
 足音がその場に響き渡っていた。床は大理石、壁に使われているのは黒御影。真夜中を思わせる黒一色に支配された中を歩いている少女。

 彼女はゆったりとした足取りで奥へと進んでいる。やがて彼女は黒一色で埋め尽くされたような広間に来ていた。そこには大きな玉座がしつらえられ、男が座っている。彼は少女が入っていたのに気がつくとじっとその姿を見ている。そして少女は声をかけられるのを待っているかのように、頭をスッと下げている。


「どうして、そんなに畏まっているの?」


 柔らかな優しげな声が少女にかけられている。それを耳にした瞬間、彼女はますます緊張したようだった。そんな少女をじっと見守るような態度の男。


「そんなに緊張しなくてもいいんだよ。別に怒ったりしていないんだから」

「でも……わたくしは、おいいつけを守ることができませんでした」

「いいつけたこと? ああ、秘文書のことだね」
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