白と黒の神話
「当たり前だよ。お前は私の宝物なんだから。もっとも、それを言うと煩いのがいるけれどね」

「お兄様ですわね」


 そう呟くとジェリータは表情を曇らせている。兄であるシュルツの思いを知っても、彼女はマスターのそばにいたいという思いがある。


「マスター、わたくしは本当に感謝しておりますわ」

「どうしたんだい。改まって」

「マスターはわたくしに自由をくださいましたわ。あの時、聖教皇に封じられたわたくしを助けてくださったのはマスターです。それなのに、お兄様は……」

「彼には彼の考えがあるんだよ。そのことは、わかってあげないとね」

「はい。それはわかっておりますわ。でも、この頃のお兄様をみているとわからないのですわ」

「考えの違いかな。彼がもう少しお前の気持ちをわかってくれるといいのにね。お前は仲間を守りたいだけなのにね」
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