白と黒の神話
「そうですわ。わたくしは誰にも邪魔されずに暮らせる場所が欲しいだけですの。それさえ手に入るのでしたら、人間に害を与える必要はありませんわ」

「お前は本当に可愛いね。こっちにおいで。そして、その顔をよく見せて」


 男の言葉にジェリータは迷うことなく近づいている。そんな彼女の頬に手をやり、その髪を指に絡ませている男。


「きいてもいいかい、ジェリータ」

「なんでしょうか、マスター」

「お前は私とシュルツが対立したとき、どうする?」


 その質問に顔色を変えているジェリータ。それは、ありえない話ではない。しかし、たとえそうなったとしても彼女の中では結論はでている。ジェリータはうつむきかけた顔を上げると、まっすぐに相手の顔をみている。


「マスター、わたくしの答えは決まっておりますわ」


 少し震えているような声。しかし、その言葉が途切れるということはない。
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