白と黒の神話
「これに相応しい自分であるとは思っておりません。しかし、お許しください。そして、私にすべてを語る勇気を与えてください。それこそが、この長い時を生かされた理由だと思っておりますから」


 深々と頭を下げ、彼女は祈り続けている。

 そんな時、外では人々が何かに驚いたように大声を張り上げているようだった。急いで窓に駆け寄り、外の様子をみた彼女は驚きの色を隠すことができなかった。


「…………」


 思わず声をなくし、立ち尽くしている彼女。そして、何かを決めたような顔で巫女装束を身につけると首からロザリオをかけると、外へと飛び出している。

 彼女が外で目にしたもの。それは、人がここまで暴力に訴えるのか、という光景でもあった。お互いの顔がわからないかのように罵りあう人々。店の扉や窓を破り、中の商品を根こそぎもっていく不埒な輩。そして、互いの意見を押し付けようとするかのように暴力に訴える人々。
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