白と黒の神話
「まったく、人間はここまで堕落できるんだね。見限りたくなるって言う気持ちがわからないでもないんだがね」

「ばあさん、そういうあんただって人間じゃないか」


 そう言うと男たちはゲラゲラと笑い出している。それをみたグラン・マはため息をつくことしかできない。


「好きに言っているがいいさ。あたしはこの先に用があるんだよ」

「そうはいかないって」


 あくまでも彼女の邪魔をしようとする男たち。そんな相手をグラン・マは姿勢を低くしてやりすごすと膝を払っている。相手の勢いというものも利用したそれの効果は計り知れないだろう。無惨にも地面に叩きつけられた格好になって呻いている相手には目もくれず、グラン・マは進んでいく。その姿はまるで何かに導かれているようにもみえる。そうやって先を急ぐ彼女の邪魔をする者はなくならない。だが、そのすべてを適当にあしらいながら進んでいく姿。それは、どうみても老婆とはいえないものだった。
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