白と黒の神話
 それに慌ただしくうなずいているジャスティン。その頃、セシリアはミスティリーナと庭の一角にいるのだった。もっとも、ミスティリーナの表情は先ほどのウィアに似ていなくもない。つまり、彼女も彼と同じような思いを抱いているのだった。


「リア、きいてもいい?」


 ミスティリーナの声に何をきいてくるのだというような顔をしているセシリア。


「リアって、好きな人とかいないの?」


 ミスティリーナは自分が社交辞令といわれる物が苦手なのをよくわかっている。そして、セシリアがそういうものに通じているのは間違いがない。それならば、単刀直入に質問する方がいいと思っている。そして、それは間違っていなかった。ミスティリーナの質問に見る間に顔を赤くし、ドギマギして言葉の出せないセシリアがそこにはいる。


「そんな人、いるはずないじゃない」


 強がった様子でそう言うセシリアだが、それが本心であるとはミスティリーナは思ってもいない。
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