白と黒の神話
 そう言い切って微笑むマレーネ。その微笑は清楚であり妖艶。二つの相反する要素でありながら、それが違和感をもつことがない。


『なんといってもこの女は妖花ともいわれておった女じゃ。ただの人間なら、たらしこんでしまうくらいわけないことじゃ』

「ずいぶんな言い方ですわね。でも、それはその方の責任でもありますわ。そうそう、わたくしセシリア様に御用がありましたのよ」

「今さら何を言い出すの」


 自分たちと敵対する立場にあると公言しているようなマレーネ。それにも関わらず、まだ用があるのかとセシリアは不信感を抱いている。


「わたくしはセシリア様のお役にたとうと申しているんですのよ」

「だったらさっさとおっしゃい。私もあなたの相手ばかりしていたくないのよ」


 苛々した表情でそう言っているセシリア。そんな彼女の様子をいかにも楽しんでいたマレーネだが、そろそろ潮時だと思ったのだろう。彼女は舌なめずりをするといかにも重大なことを告げるような顔をしている。
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