白と黒の神話
 その声に司祭は返事をすることができない。そんな相手をさらに驚かせることを聖教皇は口にしている。


「実は聖水晶はここにあるのだ」

「しかし、聖教皇様。聖水晶というのは……」


 さすがにそれ以上のことを口にするのはできなかったのだろう。思わず、聖教皇を非難するような視線を浮かべている。


「聖水晶というものがどのようなものかはわかっているだろう」

「それはそうでございますが……」


 聖教皇に詰め寄られた司祭はしどろもどろになっていた。聖水晶というものがその術者を封じるものだということは知っている。そして、大神殿にはそれ以外にも秘密にしている事実というものがあるのだった。

 大神殿というよりは聖教皇個人に伝えられている秘文書。それには、歴史では語られることのない話が綴られている。聖教皇に倒されたとなっているアンデッドの盟主が実は封じられただけということ。そして、その盟主の影に隠れていた創世神とは対極をなす存在。そして、何よりも秘すべきことは、封じられた者の魂が転生を繰り返しているということ。
< 238 / 314 >

この作品をシェア

pagetop