白と黒の神話
「聖教皇様、お言葉を疑うわけではありません。では、あの姫君を大神殿にとおっしゃっておられたのはそのせいもあったためですか?」

「そうだ。そこに予言めいたことが記してあるだろう」


 そう言って聖教皇は一冊の古文書を開いていた。古ぼけたという言葉がぴったりのそれは迂闊にふれるとボロボロになりそうだった。それを細心の注意をはらいながら、司祭はページを捲っているのだった。


「ここでしょうか。『時巡り、再び目覚める宝玉。そして、二つは一つとなる』でございますか? 時巡り、とは転生のことでしょうが、二つは一つ? 意味があるようなないような言葉でございますね」

「神が告げる予言とはそういうものだ。それよりも、アルディス姫の容姿は伝えられているアンデッドの盟主と瓜二つ。彼女が転生を果たしたものだと考えることに無理があるか」
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