白と黒の神話
「創世神様は、聖水晶を我らに委ねられた。アルディス姫が解放される日がくることはない」

「どうなされたのですか。そのお姿はまるで何かにとりつかれでもしたかのような……」

「そなたの言いたいことはわかっている。だがな、これをみればわかる。これを側におきたいと思うのは人間の性というものだろう」


 そう言うなり聖教皇は部屋の奥にかけられていた幕をさっと引いている。そこに隠されていたものがあらわれた時、司祭は思わず己の目を疑ってもいるのだった。


「これが聖水晶なのですか……」


 司祭の声は震え、うわずっている。しかし、それも仕方のないことだろう。隠されていたものはどうみても水晶でしかない。だが、その中に穏やかな表情で眠っているように見える少女がいる。見る者に守りたいと思わせてしまうような可憐な姿。


「これがアルディス姫ですか……」

「そうだよ。これを手元においておきたいとは思わないかい?」
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