白と黒の神話
「思います。これを手放すなど考えることもできません。それに、アンデッドが狙っていることがわかっているのに安全だとわかっている大神殿の結界から出すなどということがどれほど無謀なことか」


 呟くような司祭の言葉。そして、それを満足そうに聞いている聖教皇。


「わかってくれたね。それにアルディス姫は聖王女と呼ばれている。彼女が大神殿の象徴となるのは不思議なことではないからね」

「では、グローリアからの使者の用向きは私が承っておきましょう。何も最初から聖教皇様がお会いになる必要もございません」


 司祭のその言葉に聖教皇はうなずいている。そして、それをみた司祭はその場から静かに去っているのだった。残された聖教皇は水晶の中に己を封じ込めたアルディスの姿から目を離すことができないようだった。まるで魅せられたかのように彼女の姿を飽きることなくみつめている姿があるのだった。
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