白と黒の神話
 危惧していたことがすんなりと片付いたと思ったセシリアは安堵の息をもらしている。そんな彼女と一緒にいるカルロスに気がついた司祭は、わからないようにソッとため息をついている。この場はこちらから口火を切った方がいいだろうと判断した司祭は、慇懃な態度を崩そうとせず穏やかな口調でたずねていた。


「それはそうと、令嬢とご一緒なのは、ヴェネーレの王子殿下ではありませんか?」


 司祭の言葉に『余計なことを言う』といわんばかりの顔のカルロス。その彼を牽制するかのようにウィアが脇腹を小突いている。そして、そのカルロスはそんなことをしていたとは感じさせない様子で司祭に向いていた。


「たしかにそうですが、今回は個人的にということで同行させていただいていますので。ですから、仰々しくお考えになりませんように。あくまでも、カルロスという一個人という立場ですので」
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