白と黒の神話
 彼が何も話すことはない、という態度を貫き通すつもりだとセシリアは気がついていた。どうすれば、聖教皇から何らかの返事を手に入れることができるかとセシリアは考えている。しかし、聖教皇はこれ以上は何も話すつもりもない。それを物語るように彼はその場から立ち去ろうとしている。


「侯爵令嬢。これ以上の話し合いは意味がないものだということはおわかりでしょう」


 聖教皇の言葉にセシリアは何も言うことができないようだった。そんな彼女に追い討ちをかけるような聖教皇の言葉。


「今すぐ帰るようには申しません。そちらの事情もわからないではないことですから。あなたの気持ちがおさまるまで、ここにいらっしゃればいい」


 それは聖教皇との会見終了の合図。セシリアは激昂したくなるのをジッと堪えているようである。そして、聖教皇がその場を離れたとたん、セシリアは自分の思いをぶちまけていた。
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