白と黒の神話
「あんたが出てきていたら、話は別になってたんじゃないの」

『そ、そうじゃろうかのぉ』

「あんたは神竜とか言ってたじゃない。それくらいのことできるでしょうが」


 ミスティリーナの言葉に神竜はたじたじになっている。


『それはそうかもしれんがの』


 すっかり意気消沈している神竜だが、カルロスは遠慮など考えていないようだった。


「だったら、早く捜すんだな。そうしないと、本当にたたき斬るぞ」

『まったく……年寄りは敬うものじゃ。ん、微かじゃが、聖王女の気配があるの』

「本当なの?」


 セシリアの声には喜びと不安が入り交じっているようだった。神竜はそんな彼女を導くように、ウィアの懐から案内している。


『ここじゃのう』


 相変わらず緊張感のかけらもない神竜の声。しかし、その声で立ち止まった扉の前には司祭が立ちふさがるようにしている。
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