白と黒の神話
 神竜とセシリアの言葉に聖教皇はどうすることもできずにうなずくしかない。

 半ば脅されてはあるが、聖王女たるアルディスが大神殿にいたという聖教皇の言葉でその場は大騒ぎになってしまっていた。彼女を歓待するための席が設けられ、世話をするための巫女が手配される。そんなこんなで、時間は慌ただしく過ぎているのだった。

 そして、そんな騒動も一段落ついた頃。来客用の客殿のテラスに出ている影があった。空には大きな月が浮かんでいる。


「綺麗……」

「お前の方がよほど綺麗だ」


 よもや返事があるとは思っていなかったのに声が返ってくる。それに驚いて振り向いた視線の先には、テラスの柱にもたれるようにしているカルロスの姿がある。


「カルロス様……」

「アルディス。お前をみつけることができて、本当によかった」
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