白と黒の神話
 そう言うと彼女はスッと髪をかき上げている。彼女の形のいい小さな耳に真珠をつけるカルロスの手が震えていた。まるで、お互いの息がふれあうような近い距離。そして、彼はそのまま彼女の頬に手をそえているのだった。


「信じてくれるか?」

「何をですの?」

「お前のことが大事だ。お前しか考えられない。それだけではダメか? 俺はお前に相応しくないか?」


 真摯な表情で問いかけるカルロスの姿。それにこたえるようにアルディスもゆっくりと口をひらいている。


「わたくしでよろしいの? 本当に?」


 そこまで言ったアルディスの声がフッと途切れている。しかし、彼女自身がこれは言わないといけないと思っていること。カルロスの顔をきちんとみながら、彼女は言葉を続けている。
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