白と黒の神話
「わたくしもですわ。わたくしも初めてお会いした時から忘れられませんでした。だから、あなたからのお話は嬉しかったのに、わたくしが変な意地をはって、すぐにお返事しなかったから……」


 アルディスの言葉にカルロスはすっかり驚いている。信じられないことを耳にしたという顔をしているカルロス。しかし、真っ赤になってそのことを告げるアルディスの姿に嘘があるはずもない。それでも、もう一度たしかめたいと思ったのだろう。彼はアルディスの顔をソッと両手ではさんでいた。


「本当なのか? それがお前の本心なのか?」

「ええ、わたくしもあなたのことが忘れられませんでしたの」

「お前のことを誰よりも愛している」


 アルディスの大胆ともいえる言葉を耳にしたカルロスは彼女を抱きしめると耳元でそう囁いていた。そして、アルディス自身もそれに酔ったようになっている。だからこそ、二人ともここがどこかということを見事に忘れてしまっていたのだろう。
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