白と黒の神話
第10章
 聖教皇を脅かすような形で馬車を手配させたセシリア。しかし、彼女はそのことを気になどしていなかった。聖教皇がアルディスを隠すということがなければここまで来る必要はなかった、という思いがセシリアにあったせいだった。その馬車の中にはウィアの服をねぐらに決め込んだ神竜も当然の顔をして乗っている。神竜は大神殿で神竜として崇められる生活よりもグローリアでの気楽な生活を選んだのだった。


「それはそうと、このまま無事に帰れると思う?」


 馬車に揺られながら、ミスティリーナは誰にともなくそう言っていた。


「このまま、何事もなく帰ることができればいいんですがね」

「あんたの口ぶりじゃ、何かあるのが当然っていう感じがするけれども?」


 ウィアの言葉に納得するものはある。しかし、それに素直にうなずくのが嫌なミスティリーナはそう言っていた。そんな彼女の様子にウィアは仕方がないだろうという顔をしている。そんな二人をみた神竜は、ウィアの服の中から首を出しているのだった。
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