白と黒の神話
 ミスティリーナの心遣いがわかるセシリアは、彼女だけに聞こえるように囁いている。そんな二人の様子をみていたウィアはホッとした様子も浮かべているのだった。彼なりにセシリアのことは気になっていても何かができるわけではない。彼女にはミスティリーナがついていると判断した彼は、もう一つの心配を片付けようと服の中から神竜を引っ張り出しているのだった。


「そろそろ、聖教皇の結界を抜けますよ」

『そうじゃのう。そう言うお主は結界をはれるのか?』

「仮にもリンドベルグの名をいただいています。守護の結界もはれないようなら、長から半殺しにされますよ」


 神竜の問いかけにいつもの調子でこたえるウィア。そして彼は馬車の周りに守護の結界をはりめぐらせていた。


『さすがじゃのう』


 ウィアのはった結界の強度をそれとなく確かめた神竜は感嘆の声をあげている。それは神竜や聖教皇が創り上げる国一つを守護できるほどのものではない。しかし、馬車はきちんと守ることができるものである。これならば、よほどのことがない限り大丈夫だと神竜は判断したのだった。
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