白と黒の神話
『やはり、リンドベルグの名は伊達ではないというわけじゃの』


 神竜の言葉に悪びれた様子をみせていないウィア。そうやって話している間にフェーベの聖域はいつの間にか過ぎ去っている。しかし、ウィアがはった結界のおかげで安心して先を進むことができるのだった。そんな中、ずっと馬車に揺られているということにミスティリーナが音をあげかけているのだった。


「ずっと馬車に乗っているのって疲れるのね」


 うんざりしたようなミスティリーナの声。それもそのはずだろう。普段であれば馬車で移動するなど考えてもいないのだ。馬車はたしかに聖教皇が手配しただけのことはある。スプリングがよく効き、乗り心地はいい。座り続けることを考えて、マットもクッションも上等なものが使われている。しかし、そうはいってもじっとしているというのは肩が凝るものだろう。それは、馬車に乗るというのが大勢で乗る乗り合い馬車くらいしか経験がないミスティリーナには当然のことだろう。
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