白と黒の神話
 ミスティリーナのその言葉に、ちょっと元気を取り戻したようなセシリアがいる。二人は見落としたものがないかと気をつけながら、来た道を引き返していく。そんな二人の前に、ちょっとした部屋が姿をあらわしていた。


「ねえ、リア。これって隠し部屋よね」

「どう考えてもそうよね」


 通路だけだと思っていた場所にある部屋。先ほど通った時は気がつかなかったのに、と思いながらもセシリアは部屋を覗き込んでいた。

 そこにはテーブルと椅子がある。まるで、お茶会でもしていたような様子。それを見た時、セシリアはあることに気がついたようだった。


「あ、あのバカ王子!」


 セシリアのその勢いは『怒髪天をつく』という表現がピッタリだろう。彼女の思いもしなかった一面を目の当たりにしたミスティリーナは目を白黒させていた。


「リ、リア。落ち着こうよ。どうしたっていうのよ」
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