白と黒の神話
「アルディス」


 人目も何も気にしないように彼女を抱きしめているカルロス。それを見るセシリアの思いは複雑なものでもあった。しかし、彼女は何も言うことはできない。


「カルロス様」


 ようやく、帰ってくることができたというように、アルディスはそう呟いている。彼女にしてみれば、あまりにもいろいろなことがあったのだろう。それでも、ここにいるのだと言っているような表情。そんな彼女をみつめているシュルツ。彼にしてみたら彼女は妹と同じ存在なのだろう。それを証明するかのような暖かいまなざし。セシリアが複雑な表情をしているのが気にならないわけではない。しかし、空間は希望と光がきらめいているようにも感じられている。そして、それを彩るのがアルディスの笑顔だったのだ。
< 309 / 314 >

この作品をシェア

pagetop