白と黒の神話
 救いはミスティリーナが黒魔導師だと一目でわかる姿であること。そして、セシリアが男装しているということ。この二つのおかげで、奇異の目で見られることはあっても、これといった問題もなくここまで来ているのだった。しかし、彼女たちが目指しているルディアは自由国境と呼ばれる場所である。そこはどこの国にも属さない代わりに、何かあっても守ってくれるものがいないということである。普段であれば、そんな場所に行くことなど考えもしない。しかし、今回は事情があったのだ。

 ウェリオの宿で二人を待っていたジャスティンは、ルディアで会いたいといってきている人物がいると知らせてきたのだ。その相手の名前をきくなり、苦虫をつぶしたような顔になっているセシリア。しかし、彼女は断るという選択をしなかった。セシリアは承知したということをジャスティンに伝えると、ミスティリーナとともにルディアへの道を辿りはじめていた。
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