白と黒の神話
 しぼりだすというのがピッタリのセシリアの声。それはいつもの彼女のものではない。まるで老婆のような嗄れたような声。


「リア、急にどうしたっていうのよ」


 セシリアをそこまで変えてしまうものは何なのだろう。ミスティリーナには疑問だけがふくらんでいる。そして、彼女はセシリアの肩越しにテーブルの上をのぞいているのだった。


「す、すごい……これ、本物なの?」


 彼女がそう呟いたのも無理はない。そこにあるのは大粒の見事な真珠。真珠は真球に近いほど価値のあるという。そして、それは真球にしかみえない上に、キズ一つみつけられないのだ。乳白色の柔らかい色のそれがどれほどの価値をもつものか。


「本物よ、リーナ。そして、これはアルディス様のもの」

「えっ?」


 ポツリと聞こえてきた声に、ミスティリーナは驚いていた。彼女がそう言うからには、これがアルディスの持ち物であることは間違いない。
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