白と黒の神話
 なぜなら、セシリアはアルディスの話相手であり、守護役でもある。その彼女がアルディスのそばを離れるはずがないのは当然のこと。つまり、彼女がここにいるという事実がアルディスに異変があったということを公言しているともいえるのだ。しかし、それを言葉にするのにはためらいがある。そんなセシリアの様子をみたカルロスは、自分から声をかけているのだった。


「お前が自分からは言いにくいのはわかっているよ」

「カルロス様……」

「だから、是か否の返事だけでいい。アルディスはいないんだな」


 感情を押し殺したようなカルロスの声。彼にしてもこのことを口にするのが辛いのだろか。そんなことをセシリアは感じている。そして、彼女ができる返事は一つしかない。


「……はい……」


「……そうか……」


 セシリアの返事にそう呟いているカルロス。その彼に今度はセシリアが問いかけているのだった。
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