白と黒の神話
 自由国境というものをよく知っているミスティリーナの言葉には遠慮というものがない。そして、そのことはウィアも感じているのだろう。彼も彼女の言葉にうなずいている。


「わかります。こんなところにまともな連中がいるはずないですからね。では、そちらの国王陛下には何も?」

「ええ、今回のそちらからのが初めて。もっとも、これはうちの王子には絶対に聞かせられないけど」

「そっちの兄貴が筋金入りのシスコンだっていうのは知っていたがな」


 カルロスのその声にセシリアはため息をつきながらこたえている。


「あのバカがこのことを知れば、カルロス様を誘拐犯だと言い出しかねないのは目にみえています」


 そう言うセシリアは、どこかやるせなさを感じている。しかし、アルフリートのシスコンというのは有名なものである。カルロスとウィアも顔色一つ変えようとはしていなかった。
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