モラルハザード


「すみません、すみません。あの、今度必ず返しますから」

その声に驚くほど小心な態度の陽介がいた。


「おまえ、そうやっていつまでも騙せると思ってるのか。
 
 いいか、5000万、踏み倒して、すみませんで終われると思ってるのか」


「すみません、ホントにお金がないんです。だから、許して下さい」


土下座せんばかりの勢いで陽介がペコペコ頭を下げる。


「森川、おまえ、会社の住所もでたらめだっただろう。

おまえの会社なんてどこにもないじゃないか、いったい、どうなってるんだ」


太田が陽介につかみかかった。


< 153 / 395 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop