モラルハザード
「すみません、すみません。あの、今度必ず返しますから」
その声に驚くほど小心な態度の陽介がいた。
「おまえ、そうやっていつまでも騙せると思ってるのか。
いいか、5000万、踏み倒して、すみませんで終われると思ってるのか」
「すみません、ホントにお金がないんです。だから、許して下さい」
土下座せんばかりの勢いで陽介がペコペコ頭を下げる。
「森川、おまえ、会社の住所もでたらめだっただろう。
おまえの会社なんてどこにもないじゃないか、いったい、どうなってるんだ」
太田が陽介につかみかかった。