モラルハザード
横には同じように空を指さす男の子がいる。
確か…「たきざわまさやくん」のママ…
華やかなプレ青葉のママの中にあって
とびぬけて地味なスタイルのママ。
かえって印象が強くあった。
「あ、あら、ごめんなさい、私ったら、考えごとをしていて、気が付かないで」
慌てて、私はたきざわまさやくんのママに言葉をかけた。
「いえ、こちらこそ、急に声をかけて、びっくりされたみたいでごめんなさい」
薄化粧のその肌は、近くで見ると抜けるように白くてきれいだった。
「電車で通われてるんですか?」
「…ええ、まあ…」
電車で通ってることが、なんだ見下げられてるように思えて口ごもった。