モラルハザード
「まさやの子育てで望んでいるのは
のびのび子供らしく育てたいってことだけなんです。
最低のルールは守らせますが、その他は自由に、子供の時間を大事に。
今のところ、それで、困ったことはないんです。
だから、また疑問が生じたらその「お話」を聞きにいくかもしれませんが
今のところは…」
滝沢さんの話し方は、とても穏やかだったが、頑として譲らないものも感じた。
結局、滝沢さんからOKの返事はもらえなかった。
薫さんに断られたことを、電話で話すと、薫さんは相当に残念そうだった。
でも、薫さんとお茶を一緒にすることは、とりあえず了承させた。
そのことを話すと、とたんに声の調子が変わった。
薫さんの声の調子を聞いてから、私は切り出した。
「ね、薫さん、滝沢さんはいらっしゃらないけど
私だけでも、山下先生のお茶会に入れてもらうわけにはいかないかしら」
お茶することさえも、渋っていた滝沢さんを
うちにお招きするからといって了承させたのだから
これぐらいはしてもらわなきゃ。