モラルハザード
「そうね…杏子さん、この間もお話したけれど
山下先生のお茶会には簡単に参加出来ないの。
参加するには、それ相応の資格が必要だわ。人脈とか、地位とか…」
何がおっしゃりたいの、私にその資格がないとでも…
腹立たしい思いをしながらも、しかし背に腹はかえられない。
「でも、薫さん、そこをなんとかお願い出来ないかしら…。
滝沢さんをご紹介するのだし」
恩義せがましく言った。
「そうね…奥の手がないこともないわ」
「え?何、それ?薫さん、教えて」
「電話ではちょっと話しづらいから、今週のプリスクールの後にお話ししましょうよ」
「ええ、わかったわ。じゃ、明後日のプリスクールでね」
プリスクールで真琴と会うのを、あんなに嫌がっていたのに
そんなこと、すっかり忘れてしまったかのように
私は弾むような声で返事をした。