モラルハザード
「いろいろバタバタしていて
ブログにコメント出来なくてごめんね。
二人目、おめでとう、つわりとか大丈夫?」
杏子ちゃんが元CAらしいスマイルで近付いてきた。
紺地に白い襟のついたワンピース。
最近の杏子の服装は以前に比べて地味なものになった。
「うん、斗夢の時もそうだったけど、ほとんどないの。
もしかしたら、また男の子かも」
少し間があった。
「そう…よかったね。お体、お大事にね」
しかし、すぐに杏子は口角だけをあげる笑顔で答えた。
その顔は、杏子が意に染まないことがある時にする笑顔。
嫌悪な感情など、顔の隙間にも表さないつもりだろうが
この口角に全て表われているのを自分では気づかないのだろう。
「あ、杏子ちゃん、今日、この後、久しぶりにランチでもしょうよ」
「真琴ちゃん、せっかくだけど、ごめんなさい、この後、少し予定があるの」
そう答えるだろうと思ってた。
最近の杏子は付き合いが悪い。
「また、今度、必ずね!」
杏子は、ふわりと向きを変え、薫さんのいる方へと向かって行った。