モラルハザード
「与えられたレールの上しか歩かない人生って、面白味がないもんだよ」
「亮太は、贅沢過ぎる。こんな素晴らしい環境を誰でもが、持てると思っているの?」
要は、亮太はお坊っちゃまなんだ。世の中は甘くない。競争して手に入れないといけないものばかり。しかもその争いは熾烈、極まりない。
何もしなくても手に入れられる。
これが、どれほど、ありがたいものか。
亮太はその有り難みをわかっていない。
私は痛いほど味わってきたのだ。
銀行マンで転勤の多かった父について、私は小学校を何度も転校し、行く先々でいじめられた。
こんな生活は嫌だと親に頼み込み、父には、単身赴任をしてもらい、私は猛勉強し、中学は進学校の女子校に入った。
そこからも、大学受験、就職試験と幾度も競争の中に身をおいて…。
莉伊佐には、私のような目に合わせたくない。