モラルハザード
席についている人たちに目をやると、皆、どこか見覚えのある人たち。
左手奥に座っているのは、確かよくテレビで見る野球選手の奥さんだし
その横には何年か前に俳優と結婚した有名な女優さん。
そして、その向かいの席はプレ青葉で「上」の人たちが座っていて
微笑みながら会釈してくれた。
今日から、この「上級」の仲間入りをする。
私は選ばれたのだ──
この人たちを仲間と呼べる私は
奈美や真琴ととは確実に違うステージにいる。
そう思うだけで、頬がほころんだ。
「あ、桜庭さま、こちら、高畠杏子さん。ええ、プレ青葉の。とっても
教育熱心でいらして、ご主人は桜林大学病院のドクターでいらっしゃるのよ」
薫さんが、上気した様子で私を紹介している「桜庭」というのは
この山下先生のお茶会を取り仕切っているリーダ。
薫さんによると都内の高級タワマンに住み
ご主人はIT関連の会社の社長だとのこと。
いずれにしても、「上」の人だというのは、その佇まいでわかる。