モラルハザード


全員にシャンパンが注がれたのを確認して奈美が立ちあがった。

「じゃ、皆さん、用意は出来ましたか?

それでは、真琴ちゃんのバースディパーティを始めましょう。

まずは真琴ちゃん、ケーキのろうそくを消してみて」

店内の照明が少し落とされ、真琴の前のケーキのろうそくが映えた。

周りの客たちも、この華やかな団体が、どこかのセレブなママたちだと

わかって、さっきから注目している。


「では、お誕生日おめでとう、真琴ちゃん」

真琴が息子の斗夢とふうーっとろうそくを吹き消し、拍手がわく。


「じゃ、真琴ちゃんの誕生日を祝って乾杯しましょ」

「おめでとう~、真琴ちゃん」「おめでとう~」

シャンパンを乾杯する音がところどころで鳴り響く。

子供同士のジュースを乾杯させ、奈美と杏子はお互い微笑みあった。


その時──


「警察です。そこを動かないで下さい」

物々しい雰囲気の警察官たちが一斉になだれ込んだ。

奈美は向日葵を引き寄せ、杏子は莉伊佐を抱いた。

真琴は斗夢を膝に乗せ抱きしめた。


何?何なの?全体が不穏な空気に包まれ、さっきまでの賑わいが

嘘のように、物々しい雰囲気と変わった。
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