モラルハザード

誰からともなく、今日はもうお開きにしようということになり

一人、また一人とテーブルの席を立って行った。

いつもこういう時に仕切る奈美なのに

この時ばかりは茫然としたままで

やがて皆が帰るのに気づいて、ゆっくりと席を立った。

私はみっこちゃんに斗夢を託し、奈美を追ってカフェの外に出た。


「奈美ちゃん!」

奈美がゆっくりと振り向いた。


「真琴ちゃん、どうしたの?あ、ごめんなさいね。

せっかくのバースディパーティだったのに台無しになっちゃったね」


何も知らない奈美はいつものように小首を傾げて話す。


「そんなことはいいの、あのね、奈美ちゃん、私、聞きたいことがあるんだ」

私はごくりと唾を飲み込んだ。声がふるえないように。


「私、森川さんに投資話を聞かされて、3ヶ月前に200万投資したの。

それなのに、今だに何の音沙汰もなくて、とっても困ってる。

どういうことなのかな?」


奈美の顔色がさっと変わった。
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