モラルハザード

向日葵には罪はない。

悪いのは私たちなのだから。

私がもっと早く、陽介がすることを止めていれば…

マリッぺに言われた時に──

園部弁護士から指摘された時に──

陽介が犯した罪を償うチャンスはいくつもあったのに…


「そういうワケにはいかんのですよ、奥さん」

そう言いながら、不気味に微笑む右田は人の形をした悪魔だった。

「子供は、海外で高く売れるんでね」

やめて──と叫んだ私を見て、向日葵が泣きだした。

「お願いです、私のことはどうでもいいですから、この子だけは、この子だけは…」

右田に泣いてすがった私を、手下の男が引き離した。
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