モラルハザード


「言ってないって言ってるんだけど」


奈美が少し小首をかしげて私の方を向いた。


目は笑ってない。


「え?じゃ、何か違う言葉がそう聞こえたのかな」



私は引き下がるしかなかった。



「そうかも。まだ、はっきりしゃべれないから、聞き間違いあるよ」


奈美がそう丸めこんだので


私は、そうね…と言うしかなかった。




「ところで、さっきの話なんだけど」


話題を変えた奈美は、もういつもの笑顔になっていた。

< 69 / 395 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop