モラルハザード
電車がきしんで揺れて、斗夢が目を覚ました。
「よしよし、起きちゃったの?
斗夢、さっき大きいおばあちゃんが電話くれたよ。
次の駅に着いたら、お電話してみようね」
おばあちゃんはきっとすぐにお金を振り込んでくれる。
これで斗夢にもあのプリスクールのお友達と同じ場所で
誕生日パーティをしてあげられる。
マンダリンホテルに行くならおかしな格好は出来ない。
私も斗夢もお洋服を買わなきゃ。
おばあちゃんにそれもおねだりして…
沈んで気持ちに一気に光がさしたように自然に明るい笑顔が出る。
私はまどろんでいる斗夢を優しく見つめ
”おばあちゃん”と着信履歴のある携帯を握りしめ次の駅を待った。