貴方が好きでした。
始まりは一瞬で、
気付いたら落ちていた。



『咲良ー、あんたのクラスに
青いピアスしてる子いない?』

『知らない。
いないんじゃない?』



夏休みが終わって、9月に入った頃。
梅雨なんてほとんどない北から、
残暑の厳しい関西へ引っ越してきて
初めての秋の季節に姉が聞いてきた。



暑くて頭の中が沸騰する。
言葉の違いに未だに慣れなくて、
この地が大嫌いだった。
姉の問いかけに一瞬だけクラスの
男子を思い巡らせてから答える。


『多分、2年だから探しといてー!』

『何それ、その人がどうしたの?』

『イケメンだったの!』



姉の言葉にため息が漏れた。
順応性のある姉はもうこの地に
慣れたらしい。
その性格がうらやましかった。


団扇で風を作りながら、
クラスの男子を思い出しても半分は
名前が出てこない。
前の学校は2クラス約80人だった。
今の学校は6クラス約300人。
こんなに人が多くなってクラスの
男子すら覚えられてないのに
青いピアスの人を知ってる訳がない。


考えるのを止めて瞼を閉じた。
蝉の鳴き声が遠くで響いていた。
< 2 / 4 >

この作品をシェア

pagetop