蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
───あの苦い記憶が、一瞬で脳裏に蘇る。
ここまできてキスだけでは済まないことは、絢乃も分かっている。
けれど・・・。
体を強張らせた絢乃を、雅人は至近距離でじっと見つめる。
「・・・絢乃?」
「・・・っ・・・」
自分が不感症かもしれないということを、雅人は知らない。
・・・もし、このことを雅人が知ったら・・・
雅人は、どう思うだろうか。
そう思うと体が無意識のうちに萎縮する。
嫌われたくない・・・。
雅人は突然様子が変わった絢乃を、訝しむようにじっと見つめた。
・・・少し翳りを帯びた、その切れ長の瞳。
眼鏡を外した雅人の顔は驚くほどに端正で、その瞳は透き通った氷のように美しい。