蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~



「・・・前に熱中症で倒れた時も、お前は同じ目をしていたな」

「・・・雅人、さん・・・」

「話せ、絢乃」


雅人は絢乃の頬を両手で包み、絢乃の瞳を覗き込んだ。

・・・優しさと愛情に満ちた、その瞳。

絢乃はその瞳に、心の奥がじわりと熱くなるのを感じた。


「話せ」

「・・・っ」


雅人の言葉が、真摯な心が、絢乃の心を開いていく。

・・・これまで誰にも言ったことがない、心の傷・・・。

絢乃はふっと睫毛を伏せ、ゆっくりと口を開いた。

一言、また一言と噛みしめるように過去の傷を明かしていく。

───やがて、全てを話し終えた後。

雅人はそっと絢乃の髪を撫で、囁くように言った。


< 105 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop