蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
「・・・よく話してくれた」
「・・・っ・・・」
「慧君には? このことは?」
「いえ・・・」
絢乃は首を振った。
・・・例え兄でも、さすがにあのことを話すことはできない。
雅人は愛しげに絢乃に口づけ、腰に腕を回して強く抱きしめた。
「・・・不感症、か。ちなみにそれはいつの話だ?」
「大学1年のときだから・・・18の時です」
「相手の男は? 同学年か?」
「・・・はい」
一度口に出してしまったせいか、もう話すことに躊躇は感じない。
絢乃は自分の心が、雅人の言葉で柔らかく解れていくのを感じていた。
───雅人は、自分を受け止めようとしてくれている。
そのことが、涙が出そうなほどに嬉しい。