蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
四章
1.突然の辞令
日曜の夜。
家に戻った絢乃は、事の顛末を慧に報告した。
慧は絢乃の話を一通り聞いた後、静かに口を開いた。
「・・・そう。仮じゃなくて、正式な婚約者になったんだね?」
「う、うん」
絢乃は上目使いで慧を見ながら、恐る恐る頷いた。
昨日の夜、外泊の旨をメールで連絡はしたものの・・・勘のいい慧のことだ、恐らく何があったのかは気付いているだろう。
慧はダイニングテーブルの上に置いたお茶をずずっと一口飲み、口を開いた。
「おめでとう、アヤ。お前が幸せになってくれれば、おれも嬉しいよ」
「・・・ありがと、・・・」
「・・・なんて、言うと思った?」
慧の声がすっと低くなる。
・・・怒りを押し殺したかのような、その声。
ヒッと背筋を強張らせた絢乃の前で、慧はドン! とテーブルを叩いた。