蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
そのどことなく険を含んだ声に、絢乃は眉根を寄せた。
それに、『雅兄』って・・・。
女性はつかつかと絢乃の前に歩み寄り、腕を組んで絢乃を見た。
「あたしは北條愛美。雅兄の従妹よ」
「・・・!」
そういえば・・・。
前のパーティで会った史人の娘が、北條商事で秘書をしていると聞いた気がする。
雅人は『妹のようにしか思えない』と言っていたが・・・。
愛美はじっと睨むように絢乃を見つめる。
その視線の鋭さから、絢乃は自分の勘が当たったことを知った。
・・・この子は、雅人に特別な思いを抱いている。
愛美は獲物を狙う猫のような鋭い目で絢乃を見、口を開いた。
「・・・あなたが雅兄にふさわしいかどうか。じっくり確かめさせてもらうから、覚悟しといてね?」
「・・・っ・・・」
愛美は吐き捨てるように言い、くるりと踵を返した。
そのまま秘書室のドアを開け、中に入りパタンとドアを閉じる。
呆気にとられた絢乃に、大塚が心配そうに声をかける。