蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
「・・・愛美ちゃんはまだ社会人一年目だから、ちょっと子供っぽいところがあるんだ。あまり気にしない方がいいよ?」
「・・・」
大塚は気遣うように言うが、絢乃は別のことで驚いていた。
・・・なんというか。
鬼軍曹である雅人を、『雅兄』と慕っていること自体が、絢乃にとっては驚きだ。
一体愛美の目には、雅人はどう映っているのだろうか。
それとも・・・
雅人は大学を出てから、ずっとグランツに勤めてきた。
年末から北條商事に勤めているが、取締役なため、グランツの時のように部下を率いて何かしているわけでもない。
となると、愛美はあの鬼軍曹な側面を知らないのではなかろうか。
「・・・」
なんか、心配になる。
もちろん、自分が心配するようなことではないとわかってはいるが・・・。
絢乃は秘書室のドアを一瞥し、再び大塚の後に続いて歩き出した。